アマチュア無線家JH0ILLのつぶやき

ある日、突然、アマチュア無線を再び、やってみようと思い付き、十数年ぶりに再開した無線局のつぶやき。

SSB,CW,FT8のモード別の状態・・・

最近、ブログに記事を書かない(遠ざかっていた)のだが、最近、気になって調査したことを報告する。
今年、3月初めから中旬にかけてJ38R(南米グレナダ)のDXペディションが行われた。JAを含むアジア圏内からはとても難しいエリアに位置しており、私自身もとても期待していた。特に長野県の局はWorkedするまで、かなり厳しい状況だったのではないだろうか。私の家の東側100mのところには山の麓があり、低入射角度からの信号はとても弱くなってしまうようである。北米西海岸あたりなら、それほど影響は無いようであるが、遠距離になるほど、厳しい状況になる。J38Rも同様で、実際、7MHzと10MHzのFT8の信号は殆どデコードが出来ないという結果であった。CWの場合、ペディション局はAMPを常用してくれるのでなんとか聞き取れるのだが、FT8となるとベアフットになるため、非常に厳しくなる。
SSBでは、14MHz以上でなければ聞こえなかったのである。J38Rと交信する中、私が普段、DXとの交信に用いるモード、SSB,CW,FT8の実際の聞こえ方の差を調べてみようと思った。
では、どうやってその差を調べるか。それは、実際に自分の信号を聞き較べればいい。でも、それは以前は難しかったのであるが、今は、WebSDRと言われる、インターネットによって受信機が公開されているのを用いればいいのである。

実際に、14MHzと3.7MHzの2周波数で調べてみた。14MHzは九州のWebSDRを使い、3.7MHzは長野県内のWebSDRを用いた。最初に、0.5W(IC-7610の出力設定の最小)にして、CWで試験電波を出す。SSB(プロセッサはOFF,帯域は2.9kHz)で試験電波を出し、CWの信号とほぼ同じ程度になるまで、出力を増大する。
FT8では、送信をJTDXで行い、WebSDRの受信音をWSJT-Xの受信信号として入れてやる。ただし、遅れ時間が1.7秒程生じるがデコードできれば良しとする。そして、その値を読む。


14MHzのケース
 CW(1W):RST559,    SSB(10W):RS55,  FT8(1W):0~4dB
   ただし、バックノイズはS2程度であった。


3.7MHzのケース
 CW(3W): RST559,  SSB(30W):RS55,  FT8(3W) : -2~0dB
バックノイズは、S4程度であった。


このように、SSBの受信強度(了解度も)がCWと同じようにするには、10倍の強さが必要。アンテナ、電力を要することになる。CWはDX交信に有効。


FT8では余裕なのかというとそうでもない。3.7MHzでFT8:-14dB程の信号でも、発信していることは耳で聞き分けられた。FT8で-10dB以下の信号は、CWならRST319~439程度になる。Sメータは振っていた。
だから、CW+1kWの信号が実レポートでRST339しか得られない場合(J38Rの7MHz)なら、FT8では-10dB以下に相当するので、FT8+100Wの信号は、-20dB以下になると思われる。そうなると、CWでは受信できても、FT8では難しい状況になる。益して、SSBや様々なQRMの中で出ているFT8信号は更に過酷な受信条件となると言える。


分かったこと:
SSBは、CWよりも10倍の電力(アンテナ利得)が必要である。SSBで交信する局に、ビックガンが多いのは当然だろう。こちらは、CWで交信を楽しもうと改めて思った。
FT8では一般的に出力を低減して運用される。特に、MSHVやF/Hのように同時に複数の信号が出られると、その分だけ、S/Nが低下する。故に、FT8はCWよりも条件によっては受信は難しいみたいだ。ペディション局がFT8で運用する場合、これからも出力を絞ってくるだろうから、FT8での交信難易度はCWよりも高いままが続くのかな?
それよりも、CWでコンデションが良い条件のとき、パパッと交信出来てしまう方がいいのだけど。私としては、もっとCW運用者が増えることを望むだけだけど・・・

CW運用時、FULL Break-inか、それともSemi Break-inか

ツイッターで「CW運用時、皆さんはフル/セミ、どちらで運用しますか?」というアンケートを取りましたら、なんと、307票の方から投票がありました。本当に、ありがとうございました。
まずは、アンケート結果を報告します。

307票の内、38.8%(119票)がフルブレークインで運用、52.1%(160票)がセミブレークインで運用、9.1%(28票)がその他という結果でした。
様々な方から、コメントをいただきましたので、匿名にてお伝え致します。

  • 基本Full Break inかな。無接点リレーのリグが増えてほしい
  • リグによってはフルの時もあります〜
  • 両方です。
    フルだとパイルで打鍵中に他局にコールバックが開始された瞬間打鍵を止められるから。
    ゆっくり1対1の場合はセミブレークイン。
  • コンテストでランしてるときはフルブレークインです。
    その他はセミブレークインですね
  • 珍局スプリットでない限り、セミです。PTTで送信状態を保持するときもあります。
  • 他の局への応答中が分かれば即停止できますから フルが殆ど
  • セミのフル寄り
    一応空白で反対だれかのトーンが聞こえる程度
  • 少しでもリレーを労りたいので…😅
  • リレーがうっせぇなので、セミブレークインです😂
  • リレーがガチャガチャ行ったり、符号の合間にガーガーノイズが聞こえると気が散りますよね。
    ペディションやったりキー局なんかでパイルを捌かないといけない状況ではフルブレークインの必要があるのかな。
  • 最近はCWは全くやっていませんが以前のやり方からフルに一票。
    SSBでも一瞬PTTを離して受信しながら送信していたりします。これだと送信中に相手から呼ばれても気付くことができ、時間の無駄を少なくして多くの局とできたりすると思っています。
  • 意外とフル派とセミ派が拮抗してるんですね。90年代のRIGより最近のRIGのほうがフルブレークイン時のリレー音がやかましくなったような気がします。
  • リニアアンプが対応していないのでずっとセミブレークインです。フルブレークインできるリニアに買い替える気力も財力も、もう無いし。
    (いつもリニア入れてる訳ではありませんが…)
  • 国内のpileアップやDXのup指定ではフル、それ以外ではセミですね。
  • でもね、セミとは言っても、文字の間に受信が入る程度に短くしています。
  • 怒涛のパイルに参加する時はフルで
    他、殆どセミです。
    やはりリレー音が気になるリレー接点寿命が気になります。
    SSRを使ってのブレークインってないのかな?
  • コンテストやパイルアップの時だけフルブレークイン、他はセミブレークイン。リレー接点の消耗を懸念して。

コメントを頂いた方からの情報をみると、フルブレークインを使っている方は、「送信中に、直ちに受信状態に切り替える必要」からのようです。たとえば、コンテストでCQランニングしているとき、相手が呼んできたら、直ちに、送信を止めて、相手の応答に対応すれば、スムーズな反応ができるということです。また、パイルアップの状態で、相手局が何らかの信号が出てきたら、すぐに受信に切り替える、スムーズな運用には欠かせない機能です。
ところが、これだけ便利な機能なのに、あまり使わない理由は、3つの回答がありました。

  • リレー音がうるさい
  • リレーの寿命が心配
  • リニアアンプが対応していない

リレー音がうるさい一番の理由は、送受信の切替にメカニカルリレーを用いているためです。このことは、リレーの寿命が心配であるということにもつながっています。そして、リニアを使っておられる方にとっては、リニアアンプのリレーがフルブレークインに対応していないということもあります。


まず、フルブレークインを用いた通信はどのようにされているのかをウィキペディアに掲載されていましたので、紹介します。

フルブレークイン運用をQSKオペレーションと呼ぶようです。QSKでは、相手の送信中に割り込むことにより、より会話に近い通信ができることを言っています。QSKには、T/Rスイッチ(送受信切替)の技術がとても重要で、高速かつ長期間に耐えるために真空式リードリレー、若しくはPINダイオードが用いられることが要求されるようです。
QSKプロトコルがあり、QSK対応している局は、最初にQSKを表明するようです。また、QSK?で相手に可能かどうかも聞くことができるとあります。割り込みには、1ドットの短い信号を送る、そして、それを受けた局は、一時停止するか、"K"を送信するという手順があるようです。


ここからは、私のラインナップ(IC-7610+ACOM1000)の場合です。
IC-7610の送受信切替の部分は、ネット上に公開されている?サービスマニュアルに記載されています。TUNER UNIT(1/2)の回路図に送信と受信のラインが表記されており、その分離をする回路が目的のT/Rスイッチになります。

※上図で橙色部分が送信側、緑色部分が受信側、すなわちRL552が対象のT/Rスイッチ


RL552は、サービスマニュアルの部品表から、SIP-1A-12Yという部品でした。これはリードリレーで、通常のメカニカルリレーに比べて、動作時間が1/10程度で寿命も一桁長いという特徴を持っています。寿命は2億回、動作時間は0.3m秒という値です。
以前に、24WPMでコールサインを連続して出したとき、4日間で200万回の動作に達すると計算したことがある。

すなわち、1日の連続送信で、50万回のリレー動作があると考えればいい。そうなると、2億回となれば、400日に相当する。ここまでの回数となると、他の部分が壊れる可能性が高いため、IC-7610の場合は、しばらくは安定して運用可能だと言える。
一方、ACOM1000は、QSK対応と言っているが、以前、ARRLコンテスト中に壊れた。その理由が、バキュームリレーの寿命が200万回であり、酷使すると、すぐに寿命に到達するためかと思う。
※ちなみに、IC-7300はT/Rスイッチに、メカニカルリレーFTR-B4CA009Zを使っており、機械寿命で500万回、電気的接点寿命で10万回と意外にも小さい。FTDX101の場合は、AGQ200A12Zのメカニカルリレーで機械寿命は5000万回とあった。FT891,FT991Aも調べましたが、同じリレーを使っていました。


フルブレークインについて、調べていると面白い記事が見つかった。DJ0IP局が提示しているQSKの情報である。
https://www.dj0ip.de/ricki-leaks/amp-interfacing/qsk-realities/


OM曰く、短点間を聞き取ることはあまり意味がなく、文字間を取り出すことで十分ではないかということ、Near-QSKを提案している。
なお、同OMは、アンプのリレー遅延が生じることを認識すべきあると言っておりました(https://www.dj0ip.de/ricki-leaks/amp-interfacing/cw-amp-sequencing/)。それは、送信遅延がないと、リレーの切り替わるタイミングでホットスイッチングが生じるためであり、部品やエキサイターに、影響を及ぼす恐れがあることを認識しておくべきでありました。ACOM1000の場合、リレー遅延を6mSce保証しているので、IC-7610の送信遅延を10mSecに設定した。
なお、私の運用スタイルは、セミブレークイン運用。理由は、アンプのリレーの耐久性と、バックグランドノイズが聞きずらいし、特に、セミブレークインで運用していて、不都合は感じていないため。たまに、ヘッドフォンをつけたときに、使ってみることがあるけど、だいたいは直ぐにセミに戻してしまいます。

ARRL International DX Contest CW

2023年2月18日~20日までに行われたARRL International DX ContestのCW部門に参加した。このコンテストの参加レポートを捜すと、前回は2018年にも参加しており、そのときの交信数は199QSOであった。前回はLow Power部門で且つ、コンデションも今一つというところであったが、今回はHigh Power部門で、何といってもコンデションが安定して良かった。いつもながら、それほど、長時間の参加ではないにしろ、楽しめたコンテストであった。
さて、今回のコンテストの総スコアは以下の通り

現時点で472QSOである。1.8MHz帯はアンテナの問題から、参加はなし。
交信レートは以下の通り。

また、運用時刻と運用バンドは、以下の通りである。

運用時刻としては、48時間中21時間となった。時間帯が重複するが、3.5MHzが4時間、7MHzが6時間、14MHzが8時間、21MHzが3時間、28MHzが4時間である。時間当たりの局数では、21MHzが37QSO/時、28MHzが32QSO/時、14MHzが15QSO/時、7MHzが13QSO/時、そして3.5MHzが9QSO/時となった。
SSN値が112(2月20日)であり、ハイバンドにおけるコンデションが良好であった。28MHzなど、28.000から28.074MHzまでに実に500Hzほどの間隔で信号が並ぶ状態であった。そして、私の小さなアンテナ(2エレ?)で東海岸局がとても強く入感していた。28MHzは100Wの出力しか免許が無いが、とても効率よく運用できたと言える。丁度、アンテナを上げた時期が太陽活動が低下しているときであり、28MHzはあまり重視していなかった。もし、314Cあたりのアンテナにして、且つ、1kWの免許をおろしておけば、もっと、良い条件になったと思う(少し、後悔)。
では、ベストタイムな運用をしたのかというと、そうとも言えないので、VOACAPの分析に合わせて振り返りたいと思う。
以下がVOACAPで得たシミュレーション結果である。グレー表示は北米西海岸のコンデション、色で表示されたのは東海岸のコンデションである。西海岸は比較的安定しており、長期にオープンしている。東海岸はよりオープン時間帯が顕著のようだ。

これを見ると、3.5MHzは20時前後、7MHzは、17時から23時ぐらいまで、14MHzは7時前後と、11時から12時という比較的短時間であった。21MHzは、7時から11時ぐらいまで、28MHzは8時から10時ぐらいと短い時間帯である。
これを見ると、結構、コンデションに沿った運用方法であった。しかし、コンデション予測から、もっと、効率の良い運用ができたと思う。以下が考えられる。
もっとも、短時間で良い結果が得られそうな28MHzは、8時から10時までとする。その前後、7時から8時、10時から11時を21MHzで運用、更に、朝6時台と11時以降は14MHzで運用する。7MHzは、17時から23時まで。3.5MHzのピーク時間である20時は必ずワッチをする。
7MHzは結構、効率よく交信できるが、3.5MHzはある面、難しいバンドである。誰もがあまり重要視しないからなのかもしれない。どちらかというと、マルチを獲得するために出るレベルでもいいかもしれない。


運用面での課題は、私自身のCW運用スキルなのだが、特に、CTESTWINと併用していると、同時に複数の局から呼ばれたとき、アタフタして、ミスキーボードが発生する。すると、間違った符号が送られてしまったり、訂正に時間を要したりで、思うようにいかない。
CW運用速度は、3.5MHzは24WPMで、その他は26WPMにしたが、複数局から呼ばれると、厳しい。強い信号であれば、その局に耳を固定化して聞けばいいのだが、途中から強い局に呼ばれたときは、その前の局のコールが聞き逃してしまう。同時に呼ばれると課題がある。CTESTWINの操作も問題ありで、もう少し、スマートな運用をしたいものだ。ただ、どうすれば良いかは不明。
7MHzでの信号強度が強いかどうか、自信が無かったが、KW局が多い中、ほぼ、1~2回で順番が回って来たのでまあまあである。やはり、14MHzの飛びの方が課題はありそうだ。28MHzの寄生アンテナ(NB42Xでは28MHzは対象外)は、意外によく、ちょっとしたパイルは打ち勝った。21MHzがやはり一番よく、コンテストの終わりになって、漸く、スムーズな運用ができるようになった。3.5MHzは、意外にも東海岸あたりも交信できた。そして、多くJA局が交信する相手も、ほぼ、こちらで信号を得ることができた。その面では、今のアンテナはそこそこに働いてくれるようだ。
IC7610での設定については、3.5MHz、7MHzにおいてはOVFの点灯のため、デジセルは必須。APFはSHARPの80Hz設定。ただ、APFは周波数がずれたりすると、途端に取れなくなるので、CQランニング中はOFFにする。それより、PITCHコントロールが相手の信号が聴き易いようにできるので重宝した。送信側は低め、受信側は高めの周波数になる。


まとめ:

  • ハイバンドが絶好調であり、ハイバンド中心に運用計画を立てるといい。
  • CW運用スキルで、複数の局から同時に呼ばれたときの読解力に難あり
  • CTESTWINへの入力などの方法を検討する必要あり。

3.5MHzで運用中、5W QRPで呼ぶJA局を見つけた。この局は、きちんと相手からコールバックを貰っていた。ナイスファイト!である。
28MHzは、100Wでも十分にコールバックがあったし、沢山の局が出ていたので、これからのコンデション下なら、本当に力を入れるバンドだ。